赤ちゃんポストの現状
- 2022.03.30
- 社会
2007年5月、日本初の赤ちゃんポストのと呼ばれる「こうのとりのゆりかご」が熊本市の慈恵病院に開設されたのです。
ゆりかごに命を託された一人の当事者が、その後の人生を伝えるべく立ち上がりました。
平時から「望まない妊娠」「性的被害」に関心を持つことで、いざという時に役に立ちます!
➊赤ちゃんポストの生い立ち
「捨て子の助長」か「乳幼児の命を守るか?」賛否両論あるテーマではありますが、今回は取り上げたいと思います。
今回の話の中心にあるのは熊本県にある通称「赤ちゃんポスト」です。
先行事例としてはドイツの「ベビークラッペ」があり、 熊本県の慈恵病院の理事長だった故・蓮田太二さんがドイツへ視察に行き、必要性を感じたそうです。
さらに、2005年から2006年にかけて熊本県内で発生した、幼児置き去りや出産後の放置による死亡の事案が、相次いだことに心を痛めて活動を始めたと言われています。
当時の安倍総理大臣も、記者団の質問に答える形で「大変抵抗を感じる」と懸念を表明しました。
そんな中で熊本市の市長は苦渋の決断のもとで、慈恵病院の意思を尊重し、ポスト設置許可を出したのです。
現在でも賛否両論あるこの赤ちゃんポストですが、2020年度末までに159人の子供たちが預けられています。
「乳幼児の出自を知る権利の侵害」という意見もありますが、飯島の意見としては159人の命が助かったと感じています。
子供を授かったお父さんやお母さんには、それぞれ事情があります。
誰にも相談できない状況に追い込まれた結果、育児放棄や虐待につながった事例が多くあります。
現時点では、慈恵病院以外に赤ちゃんポストの広がりをみせていないのです。
難しい問題であり、後に続く病院が。
その赤ちゃんポスト開設初年度に、想定外のことが起きました。
新生児・乳児の受け入れを想定して設置された赤ちゃんポストですが、開設してすぐに、想定外のことが起きました。
推定3歳を超える幼児が預けられていたのです。
➋声を上げた当事者
今回、声を上げた宮津航一さんは赤ちゃんポストに預けられた子どもの一人です。
当時3歳だった彼は、扉が閉まる瞬間を、何となく覚えているといいます。
宮津さんの預けられた当時の身長は約1メートル、体重は14キロもあり、話しかければ受け答えもできる状態でした。
病院で適切な処置を受けた後に、児童相談所へ移されました。
そこから数ヶ月後に、熊本市内でお好み焼き屋を営んでいる夫妻のもとに預けられることになりました。
夫妻は、5人の実子を育てた後に里親に申し出たのです。
里親として宮津さんを受け入れた両親は、赤ちゃんポストに預けられる前の暮らしについて話を聞こうとしました。
しかし、幼い宮津さんは体を硬直させて何も話せなくなってしまうなど、当時の記憶を話したくない様子を見せていたため、何も聞かずに成長を見守ることに決めたそうです。
そこから夫婦の元ですくすく育ち、小学校の低学年に差し掛かった頃、事態は急変します。
宮津さんの親戚という人物が名乗り出てきたのです。
しかも赤ちゃんポストに預ける際に、必ず受け取らなければならない「お父さん お母さんへ」という手紙を持っていたことで、本当に赤ちゃんポストに預けた親戚であることが判明したのです。
そこで実の母のことについて知ることになりました。
実母は生後5ヶ月の頃に、交通事故で亡くなっていたのです。
実の父の話は聞けなかったそうですが、赤ちゃんポストに預けた親戚が、自責の念に駆られて病院に連絡をとったということでした。
当の本人は、「実母に捨てられたわけではないんだ」と前向きにとらえたそうです。
実際にその頃には、里子として受け入れた夫婦を「お父さん、お母さん」と呼んでおり、そこで親子関係が築かれたのです。
そして今年高校卒業を迎えた宮津さんは、自分の生い立ちについて広く世間に知ってもらい「赤ちゃんポストのその後」を伝えたいと実名で活動を始めたのです。
❸未来の為に、相談先を知っておきましょう
慈恵病院によると、実際に預けられた子供の身元が分からない子供は、約2割に達するそうです。
裏を返せば8割の子供達は、何らかの形で自身の出生に関する情報を得られているようです。
ただし、実の親が分かったとしてもその家庭に戻ることは少なく、特別養子縁組や施設、里親制度などで生活をしているようです。
慈恵病院では、思いがけない妊娠に悩む人に向けた無料の電話相談も実施しています。
単純に赤ちゃんを預けるという観点だけではなく、妊娠・出産の安全確保全ての事について、良い方向に行くように考えていると思います。
普段から、思いがけない妊娠や性的被害などに対し、どこに相談すれば良いかを知っておくことも重要だと飯島は考えます。
普段からそのような場所を知っておくことで、初動が早くなり解決策の幅も広がるはずです。
慈恵病院だけではなく、日本全国の病院がいろいろな相談窓口を設けています。
「性暴力救援センター日赤なごや なごみ」のように、性的被害者救済に力を入れている病院もあります。
男女問わず、もしもの時に相談できる場所を知っていれば、本当にその情報が必要な時に冷静な判断ができますよね。
今回の記事を通じて、皆さんの考えるきっかけになっていただければと思っています。
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